古語には、現代語では一言で表しきれない、豊かなニュアンスを持つ言葉があります。
中でも、徒然草に登場する「やんごとなきもの」という言葉が失われてしまったことを、私は残念に思います。
「やんごとなきもの」とは、身分に関係なく、その道の専門的な知識や技術を身につけた、優れた大切な存在を表す言葉です。
2021年、書道は「登録無形文化財」に登録され、本年12月には「ユネスコ無形文化遺産」に認定される見込みとなりました。
これは、30年程前に巨匠・青山杉雨先生が「書に世界芸術としての地位を獲得したい。その夢を実現してくれるのは、これからの人々」と語られた夢が、まさに実を結ぼうとしているのだと思います。
書が芸術として今日まで歩んでこられたのは、諸先生方のご尽力は勿論のこと、書道を陰で支えてきた多くの職人の方々の技があったからこそです。
まさに、皆さんが「やんごとなきもの」なのだと思います。
そして、書道界に限らず、日本には繊細で高度な技術を持ち、文化を支えている「やんごとなきものたち」が数多くいます。
できないことを嘆くのではなく、一人ひとりが自分の得意とするものを磨き、お互いに敬意を持って支え合う。
そうすることで、より豊かで住みやすい社会が生まれ、日本の美しい文化は、さらに輝きを増していくのではないでしょうか。